高丘親王航海記

「高丘親王航海記」 ITOプロジェクト
原作 澁澤龍彦 ・ 脚本、演出 天野天街

を、観てきました。糸あやつり人形芝居、初めて拝見しましたが、想像以上にすばらしかった!

人形たちは、まるで生きているように動いていました。でも、人形独特のかたさが、幻想的なこのお芝居に妖しさを生み、何とも美しい世界が創り上がっていました。
入院中に澁澤龍彦が書き、遺作となったこの作品。天竺めざす親王と病床で死を見つめただろう澁澤龍彦が重なり、熱いものがこみあげてきました。
ラストシーンで、病におかされた親王はトラに喰われる事を望みます。その身を腹の中におさめたトラに、天竺まで運んでもらおうと考えるのです。澁澤龍彦は、死への恐怖を抱えながらペンをすすめ、このラストシーンに辿り着いたのでしょうか。祈りをこめたような、悟りをひらいたような……いろいろ考えさせられるラストでした。
また親王の人形は、亡くなった維新派の松本雄吉さんをモデルに作られているそうで、松本雄吉さんと親交のあった人は、さらに感慨深かったのでは。亡くなった人が人形となり、目の前にあらわれるんですもの、そして幻想的な旅をしながら天竺をめざすんですもの、けれど病で志半ばとなり、でもあきらめず、トラに喰われることで辿りつこうとするんですもの。
トラに喰われることを、親王はグッドアイデアのように話していました。そういう辿り着き方もある、私もグッドアイデアだと思います。澁澤龍彦や松本雄吉さんや、自分の周りの亡くなった人たちのことを考えながら、すごく救われた気分でした。ああ、レクイエムのようなお芝居だったな。

親王役の飯室康一さん主宰の京都にある劇団みのむしさん、何度かお誘い頂いたのに行けないままで、本日拝見出来て本当に良かった。
人形には細そうな糸が何本もつながっていて、絡まないのが不思議でした。人形を操るのと、声の人は別だと思っていたら、同じ人でびっくりしました。
それから、人形を作るのも操っていたみなさんだと聞いて、ふたたびびっくり。糸あやつりのみなさん、すごすぎます!

by honnara-do | 2018-04-23 00:29 | 演劇 | Trackback

作家・楠章子のきまぐれ*のんびりブログ*日々のささやかなことを書いていこうと思います


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